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30歳代先輩院長13人が語る、私が病院選びで重要視したのは、これだ

結果的に、臨床医・院長になられている先輩達ですが、それまでのプロセスには様々なご経験をされています。
研究職、公務員から臨床医になるためにはどうしたのか?
勤務医病院を「ここにしよう」と思った決め手は何だったのか?
そして、先輩達が自らの経験から、「これはいま学生である後輩達に伝えたい」就活アドバイスをまとめてみました。

Case1
私は大学3年生の後半から動物病院を少しずつ調べていきました

上原大地 院長 霞ヶ関どうぶつクリニック(埼玉県川越市)

上原先生

Q:将来を考えていく上で、どのような病院に勤務するかは重要なポイントになります。病院の規模や医療レベル、在籍しているスタッフ、また勤務時間や福利厚生など。もちろん場所も重要です。迷って決められない学生の方も多いと思いますが、上原先生はどのように勤務する病院を選んだのでしょうか。

上原先生(以下 上原):私も学生の時はさんざん迷った記憶があります。現在、動物病院は全国に 1 万件 以上あり、その中から選ぶというのは大変な作業です。多くの動物病院は日々努力を積み重ねて診療に当たっており良い病院は沢山あるのですが、学生の時にその情報を得ることは容易ではなかったと思います。
私は大学 3 年生の後半から動物病院を少しずつ調べていきました。就職を決めるまでにトータルで約 20 病院ほど見学させていただき、自分にとっての良い病院とは何か、自分なりの基準を考えていきました。

Q:多くの病院を見学した事は基準を作る上でどのように役立ったのでしょうか。

上原:まず、実際の動物病院がどのようなものか知らない事には基準の作りようがありません。新人の獣医師はどのような仕事をしているか、また長期勤務医の方はどのような考え方なのかなど、見たいポイントは沢山ありました。また、病院の雰囲気など現場でしかわからない情報は色々あります。さまざまな病院を見学していくうちにそれぞれ違いが見えてきて、基準が作りやすくなると思います。病院側としても学生の方が興味を持って来てくれる事は嬉しいことですし、気になった病院にはどんどん連絡を取ると良 いのではないでしょうか。

Q:見学する病院はどんな方法で探されたのでしょうか。

上原:獣医師の求人サイトや各病院の HP などで調べたり、同期の友人と情報交換をしたりして病院を選びました。大学の先生や、見学先の先生の紹介で新しい見学先を決めることもありました。

Q:最終的にはどのような病院を選んだのでしょうか。

上原:「自分ならこういう病院を作りたい」という病院を選びました。獣医師が 10人ほど在籍しており、 地域でも中核をなすような病院でした。福利厚生など労働環境も良く、実際に就職してからもこの病院を目標にしたいという気持ちは変わりませんでした。ただ、在籍獣医師数が多く新人の私に回ってくる仕事が少なかったため、早く経験を積みたいという焦りが生じてしまい、実は 1年半で退職しています。
その後、改めていくつかの病院を見学させていただいた上で新たな就職先を決めました。そこは獣医師 5人ほ どの伸び盛りの病院で、院長はじめ同僚の士気が高く、臨床に集中した毎日を送ることが出来ました。
開業を目指す獣医師にとって、外科技術を習得できるかどうかは非常に重要なポイントとなります。
この病院では自分が担当した患者の手術は基本的に執刀もしくは助手をさせてもらえるといいうルールがありました。院長にとっては新人に手術をさせる事はリスク要因となります。そこを許容してくれる病院かどうか見定めることは非常に大切だと思います。

Q:これから勤務病院を探す学生の方に、上原先生のご経験からのアドバイスをお願いします。

上原:将来どのような獣医師になりたいかを考えて、その為のスキルを学び経験を積める病院がその人に とって 1番良い病院ですので、それぞれ選ぶべき病院は違ってきます。専門的な知識や技術を得たいのか、 早く開業したいのか、長期的に勤務したいのか。学生の間にある程度プランを立てておく必要があります。
最初から思った通りの環境であれば言う事はないのですが、そうでなかったとしても、やる気さえあれば活躍の場はいくらでもあります。私もそうでしたが、もし環境を変えたいと思うなら途中で病院を移るという選択肢もありますので、追い込みすぎずに就職活動を続けていくのが良いのではないでしょうか。 学生の時に見学した病院の風景やスタッフとの会話や経験談は今でも覚えていて、病院運営を考えていく上で参考になっていますので、活動自体も無駄にはならないと思います。

学生の頃にしかできない活動もありますが、社会に出てからも向上心をもって取り組んでいくことが 大切なのですね。 本日は有難うございました。

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Case2
最初から臨床医を希望していたので、大学3年生で行き先を決めました

弓削田直子院長 Pet Clinicアニホス(東京都板橋区)

弓削田直子院長

Q:学生さんが1番気になっているのは、自分の進路であると思います。獣医科大学に入ってから、色んな選択肢があることを知ったことでなかなか進路が決めれずに迷っているという話を聞いています。
進路について、弓削田先生の場合はどうだったのでしょうか。


弓削田院長(以下弓削田):今の学生さんとは状況が違うかもしれません。この点を踏まえてお話します。
女性の場合は、幼少の頃から獣医師になりたいと思って、獣医科大学に入って来た人が多いと思います。しかし、大学に入って研究室に入る頃になると、獣医師には多岐にわたる仕事があることがわかったり、社会情勢なども見えて来るようになり、これから自分の進路をどうしようかと意識するようになります。
それは、早い人で3年生で、遅い人でも5年生で明確な進路を持つようになります。
私は、最初から臨床に携わりたいと思っていましたので、研究室も「外科」を選んで入りました。
獣医になりたいと思ったのが7、8歳の頃で、その時からその思いを変えたくなかったので、他の職業へと意識が向かうこともありませんでした。

Q:弓削田先生は、幼少の頃から自分が獣医師になりたいとの思いをずっと持ち続けて、現在の臨床医、院長先生になられたということですね。

弓削田:そうです。
私の頃は、何年か勤務医としての修業を積んで、そのスキルとノウハウを活かして、いずれは独立・開業するのが一般的でした。
夫婦揃って獣医師として開業する場合とか、1人で開業する場合とか、とにかく開業が「最終目標」である人が多かったように思います。
それが最近では、開業志向の学生さんが減って来ています。一方で、一生勤務医でという志向の人は増えて来ています。 また、私たちの世代では、「どん欲にどんどんやって、時間も惜しまないのが勤務医の仕事である」と思ってきましたが、今の学生さん世代のなかには、そうは思わない人もいます。「さとり世代」と名付けられていますが、他者から言われたことはきちんと正確にできるし、勤勉ではあるけれども、仕事は仕事、自分の事、自分の時間は大事にするという考え方ですから、公務員や外資系企業が人気を集めるのもさとり世代の特徴の現れであると言えるのではないでしょうか。

Q:弓削田先生は最初に勤務する病院探しをいつごろから始められたのでしょうか。

弓削田: それは、大学3年の時からでした。
きっかけとなったのは、大学の授業で行われた、現役の臨床医のセミナーでした。
その病院には先輩が勤めていたので、その先輩から意見を聞いていたことと、その院長先生のセミナー内容を聞いて、私は勤務先をこの病院に決めました。

Q:弓削田先生が勤務先病院を決めた理由を詳しくお聞かせください。

弓削田:一番重要だと思った理由は、「時代の最先端を行く治療をしっかりとやっていること」でした。
今の医療技術は日進月歩で進化していますから、その進歩についていくだけで大変なのですが、「時代の半歩先行く病院である」ことは重要なポイントにしました。
もう1つは、「患者様に対してどんなことをしている病院なのか」という点。例えば、クレジットカードでその動物病院独自のハウスカードを出しているとか、病院の付加価値付けに熱心に取り組んでいることも重要視しました。
さらには、地域貢献をどのようにしているのかも選ぶ上で大事にした点です。
そして最後に1番重要視したのは、「どのように病院を経営していけばいいのかを学べない病院はNGとした」という点です。

Q:今の学生さんに向けて弓削田先生からアドバイスをお願いします。特に女子学生に対してお願いします。

弓削田:私は小動物の臨床医なので、その視点からの話になりますが、女性は家庭をもったり、家族をもったりしますから、臨床医になったとしても続けていくことが難しくなってしまいます。そのために、「無職率(主婦)」とか、「復職率」がとても低いのは残念なことです。
子供が落ち着いたら復職できる仕組みであるとか、子供の面倒を見なければならない時期には働き方や、勤務時間に便宜を図る仕組みであるとか、離職から復職までのブランクを回復させる仕組みであるとか、こういうサボートをしてくれる病院を選ぶことは大事な視点であると思います。
私たちのPet Clinicアニホスもそんな仕組みを持った病院にしていきたいと日々取り組んでいます。
もう一点は、これから飼育動物の頭数が減っていくのでこの業界は先細りだろうという情報が届いていることと思いますが、実際に臨床に携わっているから言えるのは、しっかりとした医療と飼い主様へのサービス、ホスピタリティーをしっかりしている病院には必ず飼い主様が来院してくださいますので、「臨床はこれから先が真っ暗」ということにはならないことをここで強調しておきたいと思います。

本日は大変参考になるお話を有難うございました。

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